アルドノア・ゼロ

感想とレビュー

●リアルな世界観

もしかしたらこんな未来が待ち受けているかもしれない。そうであったとしても少しもおかしくはない。アルドノア・ゼロの世界はそんな綿密に計算され設定された世界観の上に成り立っている。荒唐無稽ではない、今日の先にあるかもしれない出来事が粛々と襲ってくる。飽和した地球から火星へと棄民された人々が発掘された火星の遺産を手に地球に全面降伏を迫る。しかし、火星とて一枚岩ではなくそれぞれの立場なりにそれぞれの正義があり行動がある。それが複雑に交錯し、地球と火星の関わり合いは最悪の戦争へ、地球人に殲滅か隷属を迫ってくる。そんなぎりぎりのところで戦う人々。戦争物が大好物な方々にも納得と満足をしていただける作品です。

●戦術と戦略

軍事ものに詳しい方々には言うまでもないことですが、敵の戦艦を鹵獲して戦う一部隊が主人公たちの所属するものなのでここで論じられるのは戦術レベルのお話ですが、火星側を描く場合は広く地球戦線や火星の政治にかかわることもあり、戦略レベルのことを描写する場合もあります。圧倒的な科学力を背景にしている火星の戦力に鋭い洞察力で対峙する主人公伊奈帆。絶対的な戦力に寡兵のほうが策を使って快勝するカタルシス。魔法ではなく科学や物理学で対処するところがリアルですごいです。２期になると伊奈帆は負傷した眼球に補助ＰＣを連動させ、反応速度や処理能力を大幅にアップさせているが、敵と戦って倒すために必要なのはそういう架空の科学力ではなくて、今も現実に実証されている論理、定理であるというのが凄いと思うのです。

●ボーイ　ミーツ　ガール　戦場でのラブロマンスは格別です。
戦場で知り合った不思議な少女。実は敵国のお姫様というのはベタすぎますか？　でもロマンですよね。平和を愛し、火星と地球のために行動する姫は過激な戦争推進派のため、テロの標的となる。味方のはずの者たちから命を狙われる姫。彼女を助けないなんて男の子じゃない！　そんな彼女を助け出そうとするスレイン。彼は地球人ながら姫に救われて火星で生かされている存在でひそかに姫を慕っていた。二人の少年と一人の少女。彼らのわが身を顧みない真摯な恋心が戦争を動かしてゆくのです。なぜ地球の空は青いのか……必見です。

●主題歌も素敵

アルドノア・ゼロの音楽は澤野弘之による美麗かつ荘厳なもの。主題歌は梶浦由記と Kalafinaによる美しい曲が印象的ですが、2期からは１期でエンディングを担当していたSawanoHiroyuki[nZk]:mizukiが歌っています。２期のエンディングは藍井エイルで、世界観を反映した良い曲です。聞くと今でも画面がよみがります。